~歯周病の一般知識~

ムシ歯(う蝕)は何となく知ってるけど、歯周病は?

ムシ歯の動態

現在、国民の健康意識が高まり、予防の大切さが浸透し、歯の保存を希望されることが増え、歯科治療も目覚ましい進化を遂げています。80歳で20本の歯を残す、8020運動のデータでは、1993年に2.8%だった80歳の達成者の割合は、2016年に25.7%まで増えています。しかし、いまだ多くの国民が年齢の増加とともに歯を喪失していることとなります。(図1)

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 図1 抜歯の主原因(全体)と抜歯の主原因別にみた抜歯数(年齢階級別、実数) 厚生労働省HP歯を失う原因 e-ヘルスネットより抜粋

日本人の歯の喪失理由は、ムシ歯(う蝕)と歯周病です。

**日本人の歯の喪失理由の第一位は歯周病であり、**その予防対策は急務とされています。

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1970年頃、ムシ歯の洪水と言われた時代があり、歯科医院に行く理由はムシ歯が主でした。第2次ベビーブームで子供の数が多く、ムシ歯ができたら治療をするという考えで、ムシ歯予防や管理という概念は浸透しておらず、治療に用いる材料も限られていたという背景があります。

しかし、現在、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage)を実現している日本の健康保険システムに加え、予防概念の周知や学校関係者など多くの方のご尽力によりフッ素を用いたムシ歯予防が浸透し、ゼロではないものの、文部科学省のデータでは、ムシ歯の罹患率は減少していることが報告されています。(表2)

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 表2 12歳のひとりあたりのムシ歯数 文部科学省学校保健統計調査-結果の概要 ****より

12歳のムシ歯数は減少していることがわかります。余談ですが、年齢別に比較すると10歳〜12歳はムシ歯が減少します。これは、乳歯の生え変わり(虫歯だった乳歯が抜けてムシ歯がない永久歯が生える)が影響していると言われ、中〜高校生で少しずつ増えてきます。ただ、全体のムシ歯数は減っています。

調査時期 ムシ歯本数
平成11年1999年 2.92本
平成13年2001年 2.51本
令和元年2019年 0.70本
令和3年2021年 0.63本
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歯周病の動態

では、もうひとつの原因疾患である歯周病はどうでしょうか。

歯周病は1953年(昭和28年)に歯槽膿漏症の研究が文科省科学研究費補助による総合研究として始まりました。当時は、不治の病とされ、原因もはっきりとわからないため、もちろん歯ブラシ指導もなされていないことが普通のことでした。1961年に国民皆保険制度が始まりましたが、当時は、歯周病治療項目の制限が今より多く、抜歯して義歯にした方が報酬(点数)が高い状況のようでした。(川崎仁先生 長期経過症例からみた治療成功の要点より)