「歯科健診って、何が目的?ムシ歯を見つけるだけ?」

~求められる国民皆歯科健診の背景~

一昔前、歯科健診と言えば、学校や一部の大きい企業が取り扱うものであり、大半の方は何か問題が起きてから歯科医院へ行くことが当たり前でした。誤解を恐れず言うならば、歯科健診は医科の健康診断のおまけのような存在と認識されていたのではないでしょうか。

しかし、現在、日本は、2007年に65歳以上の年齢が全人口の21%を超える超高齢社会を迎え、状況が大きく変化しています。ご存知のように、政府はこの状況について、骨太の方針に 生涯を通じて切れ目のない歯科健診と文言を盛り込み、口腔の健康維持の必要性を認識しています。 (令和3年10月1日現在、65歳以上の人口に占める割合・高齢化率は28.9%)

これは厚生労働省資料においても、治療中心型から治療・管理・連携型へ、歯の形態の回復から口腔機能の維持・回復へ歯科治療の需要が移行していくことを示唆しています。(図1)

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 図1 歯科治療の需要の将来予想 厚生労働省資料より抜粋

超高齢社会において、従来の削って詰める・かぶせる治療という歯の形態の回復から、口腔機能の維持・回復による口腔機能管理の需要が増えることが予想されてます。

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日本歯科医師会資料より、口腔機能の管理による在院日数(入院日数)に対する削減効果があり、また、歯数が20本以上残っている方が医科の医療費が安くなるという結果も示されており、口腔内の健康を維持管理することがいかに重要であるかが示唆されています。そのために、歯科健診により早期発見し、軽症のうちに早期治療を行うことが望ましく、歯科健診の充実と多くの年齢層の受診者が求められています。(図2)

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 図2NDB からみた歯数と医科医療費との関連 日本歯科医師会資料より抜粋

NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)から男女を問わず、あらゆる年齢層で、歯の数が 20 本以上のグループは 19 本以下のグループより、医科医療費が低いことが示されています。

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その一方で、 葛飾区が取り組むSDGs「すべての人に健康と福祉を」に健康診断が挙げられていますが、受診率は、葛飾区は関係機関、関係者のご尽力により東京都平均より高いものの、啓発の機会は十分とは言えず、このままでは葛飾区事業である歯科健診の一部は予算が下げられ、今後、健診事業の縮小につながることが懸念されるところです。(表1)

葛飾区歯科医師連盟としては、葛飾区へ区民健診事業の重要性を深く理解いただき拡充するとともに、区民の健康のために健診事業がいかに大切かの啓発を目的とし、その活動を推進するために議員の皆様には歯科医療の更なるご理解をいただき、推進いただきたいと考えております。

区民の皆様におかれましては、ご自身の健康増進へのご理解に、議員の皆様におかれましては、歯科医療・健診事業の推進活動の一助になれば幸いです。

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 表1 受診率(令和 4 年度葛飾区歯科医師会開催健診説明会資料より抜粋)

葛飾区成人歯科健康診査および特定健康診査(医科)の受診率

受診率は13〜15%、東京都の平均と比べると葛飾区区民の健康意識が高く、かつ葛飾区および葛飾区歯科医師会が健診事業の重要性を理解していることがわかります。しかし、65%が受診をしている医科検診と比較し決して高い数字とは言えないのが現状です。

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