歯周病と糖尿病、どう関係している?

国民病?糖尿病とはどういう病気?

糖尿病は平成24年国民健康・栄養調査において、約2000万人が罹患していると考えられる病気です。そして、網膜症、腎症、神経障害などの合併症を引き起こし、虚血性心疾患、脳梗塞などの動脈硬化性疾患の発症や進行に関与することが知られています。

糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡(こんすい)などをおこすことがあります。

このような合併症は患者のQOLを著しく低下させ、医療経済的にも大きな負担を社会に強いていることが指摘されています。そして、糖尿病は歯周病と大きく関係していることがわかっています。

糖尿病は、大きく分けると「1型糖尿病」、「2型糖尿病」、「その他の特定の機序、疾患によるもの」、そして「妊娠糖尿病」があります。

<aside> <img src="/icons/dental_gray.svg" alt="/icons/dental_gray.svg" width="40px" /> 表1 1型糖尿病と2型糖尿病の特徴 糖尿病情報センターHPより

1型と2型糖尿病の特徴について。一般的な糖尿病のイメージは2型糖尿病となります。どちらも歯周病には関係していると言われています。

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糖尿病と歯周病の関連性は、1990年代から多くの論文で指摘されており、第6の合併症と表現されています。歯周病は、1型と2型を問わず1型2型を問わず歯周病のリスクファクターとなっています。(もうひとつは喫煙です。詳しくは⇨ 「歯周病を知ろう!」どういう病気?

糖尿病は身体が慢性炎症を起こし,炎症性サイトカインのうち、特にTNF-αが骨格筋・肝臓に作用してインスリン抵抗性を惹起し糖尿病となります。

歯周病菌は血管内に移行し、菌体のもつ内毒素が脂肪組織や肝臓からの炎症性サイトカインのひとつであるTNF-α等の産生を強力に推し進めます。TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを抑制しインスリン抵抗性を高め糖尿病を進行させます。

歯周病を合併した糖尿病の患者さんに、抗菌薬を用いた歯周病治療を行ったところ、血液中のTNF-α濃度が低下するだけではなく、血糖値のコントロール状態を示すヘモグロビンA1c(HbA1c値)も改善するという結果が得られています。

HbA1c値 が7%を超えると、歯周炎の進行が早まることが確認されています。その一方で、歯周病治療を行うことで、HbA1cが改善することが示唆されています。特に2型糖尿病においては、日本糖尿病学会による糖尿病診療ガイドラインにおいて歯周病治療が推奨されています。